吉田ヘレネと金曜日の天使

* ep03 * 夜の魔女、闘いの終止符











その刹那。
漆黒が辺りを包んだ。















吉田ヘレネが宅急便の業者の方と応対をした後、不意の来客があった。

突然現れた来客者は、戦慄して震える吉田ヘレネの前で、
ただ、名乗った。




        "魔女リリス"と。




こうして魔女は現れた。
俺達の前に。



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自己紹介が遅れた。

俺の名前は、高村カズヤ。
豆腐を愛し、信義を重んずる、ごく普通の、一般的な男子高校生。

吉田ヘレネとは、クラスメイトであり、幼馴染でもある。

なぜ、吉田ヘレネに代わって、俺が物語の進行役を務めるのか?
その理由を説明させて頂く。



この物語を、ここまで読んで頂いた読者の方は、もう既にお気づきだろう。

吉田ヘレネの綴る文章には、「軸」というものが存在しない。

軸の無いまま、話を進行させて行く事で、様々な誤謬(ごびゅう)を招き、
説明不足の箇所が生じてしまい、その度に、読者を困惑させてしまう。



それならば、と、俺が立ち上がったわけだ。



見てろ吉田ヘレネ。
収拾の付かなくなった物語に、俺が終止符を打たねb



  ヒュルルルルルル…
           ズドシュッッ!



魔女の放つ尖った氷の刃が、穿孔して地に鋲(びょう)を打つ。
とても鋭利な刃だ。
もし"アレ"が胸部を直撃していたら…想像するだに恐ろしい。



「ちょっと高村!
どこ向いて誰にしゃべってんの!?はやく逃げてぇー!」



しまった。現在は魔女との戦闘中だった。
作品の進行について説明している猶予は無い。

吉田ヘレネが、俺の手を取り、魔女の前から逃げようとする。



しかし、逃げられない。



「あれ…?
なんで、こっちに行けないの…?」



どうやら、俺達のいる玄関の周りには、
"見えない壁"のようなものが存在し、
家の中や、道路の方に行くことは
出来ないらしい。




魔女が、不敵な笑みを浮かべて、
蔑むような目で俺達を一瞥しつつ、
滔々と語り始めた。



「ククク…
貴様ら、よく聞くがいい。

この玄関の周囲に、結界を張らせてもらった。

お前達は、助けを呼ぶことはおろか、
逃げ出すことすら出来ん。

外界からの助力が欲しくば、私を倒してゆくが良い。

もっとも…
今の貴様等には、無理な話だがな…ククク…」



「くうっ、かくなる上は…!」



「吉田!やめろ!」



俺が止めようとするのも聞かずに、
吉田ヘレネは、玄関先にあったコウモリ傘を手に取り、
果敢(無謀?)にも、リリスと名乗る魔女に
斬り込んでいく。
(コウモリ傘は刃物では無いので、斬り込む、という
表現は不適切かもしれないが、彼女の気合を見る限り、
斬り込む、という表現が、この場では相応しい。)



「こう見えてもあたしは、
剣道部のレギュラーなんだっ!

剣道部なめんなっ!
せいっ…やぁぁぁあーっ!」




「ふっ…ムダなあがきを…」



しかし、吉田の放った一閃は、魔女リリスに
いとも簡単に避けられてしまい、
オフィス街の中年サラリーマンが汎用していそうな
デザインのコウモリ傘は、ブウンッ!と勇ましい音を
立てながらも、奮闘むなしく、虚空を彷徨う。



さて、少し話を戻そう。







今日、俺は、吉田と共に豆腐屋へ赴き、
その後、なぜか強引に吉田の自宅に
連れて行かれ、就寝した後、なぜか強引に
吉田からツイスターゲームの饗応に逢い、
現在は、なぜか、吉田が魔女リリスという
トンデモ女と闘うのを、刮目して眺めている。


なぜ、この不条理で理不尽な状況に、
俺が順応しているのかというと、それh



「あぶないっ、高村!」



 ヒュルルルル…



魔女リリスの放った鑓が、俺に向かっていく。

それに立ちはだかるように、吉田が
俺の前に仁王立ちし、俺の身を護ろうとする。



ズビシイィィッ!



「ッ痛ぁっ…!」



吉田の脚に、漢数字の"一"のような形の
傷が、クッキリと浮かび上がる。

そんな…吉田が…俺の為に…



「大丈夫か、吉田!」


「ううん、ヘイキ…

ちょっと、ヤリが、ひざを掠めただけ…

それよりもさ…高村…
なんというか…



す こ し 黙 れ 。



ド ス ッ 


後頭部へ、吉田からの掌底を受けた俺は
気絶し、物語の唯一の進行役を失ったまま、
着地点を求めて、話は進んで…い…く…




===========================




「Ψ(`∀´)Ψ
ククク…

Ψ(`∀´)Ψ
なにを悠長に話などしておるのだ、貴様らは…


Ψ(`∀´)Ψ
さぁ、時は満ちた。

Ψ(`∀´)Ψ
貴様らの鮮血と、若き屍肉を神に捧ぐ…
Coda(最終楽章)を奏でようではないか!」




     ヒュンッ!!
  ヒュンッ!! ← - - - -
 ← - - - -
   ← - - - -
 ヒュンッ!!



「Σ(・Д・)
ああっ!
玄関の傘立てに入れてた傘が、
あたし達に飛んで来るうううっー!







。゜(゚´Д`゚)゜。
終わりだ…

もう、あたしたち、終わりだ…

・゜゜・.(/□\*).・゜゜・
ふぇぇえん…短い人生だったヨ…」



「(ノ゚д゚)ノ
キイェェェェェエェエ!」




     ←
 ←   ピタッ
   ←




「Σ(;Д;)
ああーっ!
正気を取り戻した高村が両手をかざしたら、
飛んできてた傘が空中でストップしたぁー!」



「Σ(`Д´;)
な、なんだと!?
あの男の何処に、そんな異形の力が…!?」


「(ノ゚д゚)ノ
俺の名は高村カズヤ!

魔女リリス…貴様に話がある…!」



「(`Д´;)
は、話だと…!?

Ψ(`∀´)Ψ
ククク…
いきなり妙な力を使ったから、何かと思えば、
ただの、助命嘆願の為の時間稼ぎか…

Ψ(`∀´)Ψ
あるいは、遺言でも残すつもりか…?
ククク…浅ましいな…」



「(ノ゚д゚)ノ
いいから話を聞け!

(ノ゚д゚)ノ
魔女リリス…

お前は、豆乳というものを存じているか?」



「Ψ(`∀´)Ψ」

「(・Д・)」



「(ノ゚д゚)ノ
豆乳…

そう、それは、俺の愛する豆腐と同様、
大豆から造られた、地上ではポピュラーな乳飲料…

(ノ゚д゚)ノ
ビタミンB1、B2、B6、ビタミンEなどが
豊富に入っており、特にビタミンEは、肌を美しく
保つ働きがあるので、 美容にも効果があると謂われている…

(ノ゚д゚)ノ
だが、●ikipediaにも書いてあるように、 大豆特有の青臭さがあり、
飲みづらいと感じる人もいる。



(ノ゚д゚)ノ
そこで!
紀●から好評発売中・イチゴ味の調整豆乳の登場だ!
豆乳独特の、むへぇっ、とした苦味が、あら不思議、
イチゴ味だから気にならない!
これで毎日のめるという寸法!
もちろんダイエットにも最適!」



「Ψ(`∀´)Ψ」



「(ノ゚д゚)ノ
俺がいま背中に背負っているリュックの中には、
このイチゴ味の豆乳が1ケース入っている。

どうだ魔女リリスよ。
どのような意図があって俺達に刃を向けたのか
俺には理解出来ないが、そなたもきっと、
ダイエット、美容には興味がある筈だ。
このイチゴ豆乳を差し出す代わりに、今回は、
見逃して貰えないだろうか…?」



(・Д・).。oO(高村。。。
      バカだ、バカだと、前から思ってたケド。。。)

(TДT).。oO(ここまで大バカだとは思わなかった。。。!)



「Ψ(`Д´;)Ψ
と…豆乳っ…豆乳っ…!?

しかも…イチゴ味…だとっ!?」



(TДT).。oO(あれぇー!?
魔女リリスが食いついてるぅー!?)



「(ノ゚д゚)ノ
なんならマロン味も一本サービス!」



「Ψ(`Д´;)Ψ
くうっ!仕方ない!
今日のところはお前の持つ
豆乳セットで見逃してやろうっ!

いいか!次は無いと思え!」



(TДT).。oO(魔女もバカだった!
       おかげで助かったー!)



===========================




「(・Д・*)
ねぇ高村ぁ…」

「( ゚д゚)
なんだ、吉田?」

「(・Д・*)
さっきは、そ、その…

(=Д=*)
…ア…アリガト…//////」

「( ゚д゚)?
ん?ああ、気にするな。」

「(・Д・*)
あのさ高村…
さっき、魔女リリスに差し出してた
イチゴ味の豆乳なんだけど…」

「( ゚д゚)
あ、まだ残ってるぞ?
バナナ味だけどな…」

「(>▽<*)
マヂで!?それちょーだい!
飲みたい飲みたい!
あたしも飲みたぁーい!」

「( ゚д゚)
んー、俺が飲もうと思ってたしなぁ…

…そうだ、面白いこと言ったら、
くれてやるよ。お題は"豆乳"で。」

「Σ(=△=;)
えええっ!?
そ、そんな、急に言われても…」

(=△=;).。oO(豆乳。。。豆乳。。。)

!(・▽・*).。oO(あ!ひらめいた!)



「(>▽<*)
まめちちー!
豆乳と書いて…まめちちー!」



「( ゚д゚)」



「(>Д<*)
まめちちー!」



「( ゚д゚)」



「(>Д<*)
まめちちー!

(>Д<*)
まめちちー!まめちちー!」



「( ゚д゚)」



「(>Д<*)
まめちちー!まめちちー!

(TДT*)
ねぇ、ちょっと高村!
なんか反応してよぉぉおおぉ!」



「( ゚д゚)…」



「(TДT*)
まめちちー!まめちちー!
ちちー!まめちちー!まめちちー!

よぉし、こうなったらぁー!」

ヌギヌギ♪



「( lli゚д゚)
ああっ!ばかっ!吉田ぁ!
脱ぐなっ、上着を、だめっ、あっ!
脱っ、ブラ、外っ、待って、待っ、
だらぁぁぁぁっ!!!!!



「(TДT*)
ほら!見てよ高村!
ま め ち く び ー ! 」







心あてに折らばや折らむ初霜の
      置きまどはせる白菊の花

          凡河内躬恒






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